投稿者: referee-ichikawa.sakura.ne.jp

  • 2025.10 第4弾 「コモンセンス」

    サッカーの競技規則は、1~17条で構成されており、条文自体は、140ページと薄いです。VARの導入によって、競技規則は詳細になってきましたが、この条文で記載されてないことが試合では多く起こります。例えば、PKを行う際に自らボールに水をかける行為などです。「競技規則に書いていないから何をしてもよい」「ルールとして審判が決めてほしい」という声をよく耳にします。
    皆様は、普段の生活で六法全書に照らし合わせて行動しておられますか?

    サッカーでいう「コモンセンス」は、「常識」「良識」ではなく、競技の「精神」、競技規則の「精神」に基づいて解決することを求めていると考えます。では、その「精神」は何かというと、不可欠な要素である「フェア(公正・公平)」、さらに「選手の安全・安心、お互いが快適なプレーができる」ことです。この「精神」を理解して、試合で勝利することを目指して個々の選手やチームが全力でプレーします。審判が指示したり判定したりするのではなく、選手、ベンチ役員が相手チームをリスペクトし、サッカーの「精神」、競技規則の「精神」、「コモンセンス」に従って判断、行動したいたものです。

    イングランドで競技規則が成文化された1863年(日本では新選組結成)頃に最も重要視されたのは、ジェントルマンシップ(紳士・淑女)の涵養※だと言えます。これはプレーだけではなく、日常の生活にも求められています。ドイツの古い諺の「サッカーは子供を大人にし、大人を紳士・淑女にする」は、今でも通用すると信じています。決して、野蛮な人たちが紳士・淑女を装ってプレーしていると言われないようにしたいです。
    ※涵養(かんよう):徳、知識、人格などをじっくり時間をかけて育てること

    審判も試合中に起こるいろいろな行為を見つけ出して、罰則を適用するのではなく、この「精神」に基づき選手とコミュニケーションをとって、選手全員が快適にプレー出来る環境作りが求められていると思います。

    「コモンセンス」に基づき、「美しいサッカー」を選手・ベンチ役員・審判員・観客と一緒に実現したいものです。

  • 20251001 第3回 「喜ばせごっこ」

      審判活動は、年齢・性別・出身・職種などによらない人たちの集まりですので、日常とは異なる新しい発見や学びがあると思います。私自身、29歳から審判を始め、楽しいなあと実感するには時間がかかりましたが、いろいろな選手・監督・審判員・運営係・観客の皆さんと交流させていただき、人生を豊かにすることができたと感じています。
    選手・監督から辛い言葉や理不尽な態度をぶつけられた時もありました。今から振り返ると、判定の正誤に加えて、選手の感情やゲームの流れを無視した自分本位の権威的なレフェリングだったと悔やまれます。選手や監督は非常に敏感であり、突発的に対立を引き起こします。一方で、危険なプレーや狡いプレーなどが起こらないようにマネジメントすると、選手も協力的にプレーしてくれました。試合終了後、清々しい表情でピッチを離れる姿を見ると嬉しくなりました。
    試合しか会わなかった選手や監督と、今でも笑顔で昔話しをすることがあります。立場は違っても、時間を共有し、それぞれが全力で取り組んだ結果だと思われます。
    試合を通して、審判は選手を喜ばせ、選手は審判を喜ばせてくれます。勝ち敗けという結果が伴いますが、選手が何らストレスを感じずプレーに集中し、タイムアップ時に選手たちが怪我なく、相手と精一杯戦ったと感じてもらえば、審判員にとっては最高の喜びです。その達成感が審判を続ける力になります。
    さらに、もう一つ、審判を続ける力に審判仲間の存在が大きかったです。特に、うまくいかなかった、判断・判定ミスをした、選手との関係性がうまく築けなかった時など、一言アドバイスや励ましの言葉をもらえると救われました。決して、慰めだけではなく、事実を突きつけられ、するべきことを明確にしていただけたことによって自分を冷静に振り返ることができました。そして、「次こそは」と心を奮い立たせた覚えがあります。今のように情報が簡単に得られない時代でしたので、電話、手紙・ハガキで励ましていただいたこともあります。本当に仲間がいてよかったと思っています。そして、自分自身もそういう存在になり、「喜ばせごっこ」がしたいと思っています。
    市川には、各種講習会だけではなく、SS(原則奇数月第2土曜日)、寺子屋(原則第3月曜日)、茶話会(原則偶数月第3木曜日)、親睦会(12月)などがあり、申し込みをしなくても参加できますので、自分から仲間を広げてはいかがでしょうか。自分と同じ悩みや楽しみを共有し、審判活動を楽しみたいです。審判での「喜ばせごっこ」を味わってみませんか?

  • 20250808「グリーンカード」

    皆さんはイエローカードやレッドカードはご存知だと思いますが、「グリーンカード」を試合中にご覧になったことがありますか?あるいは、示したことはありますか?
    日本サッカー協会は、2004年度よりU-12(4 種)年代以下の各種大会、試合においてグリーンカード制度を導入しました。選手たちのポジティブな行動に対する賞賛や感謝を表すために、レフェリーがグリーンカードを示すものです。ルールでやってはいけないことを取り締まるだけがレフェリーではなく、選手・チーム役員が相手をリスペクトする行為や態度をどんどんやってほしいという意味をこめたグリーンカードです。ですから、イエローカードやレッドカードのように示すのではなく、レフェリーは笑顔で、プレゼントするような姿勢などで示したいと私は考えています。

    ◎シーン
    では、具体的にはどんな場面で「グリーンカード」を示すかというと、相手に勝つために一生懸命全力でプレーしたこと以外に
    ・怪我をした選手への思いやり。
    ・意図していないファウルプレーの際の謝罪や握手。
    ・自己申告(ボールが境界線を出たとき:スローイン、コーナーキック、ゴールキック、ゴール)。
    ・問題となる行動を起こしそうな味方選手を制止する行動。
    ・チーム(チーム役員を含む)が試合全体を通し、注意、警告、退場も受けず、ポジティブな態度や言動。
    などをレフェリーが認めた際に提示します。

    ◎タイミング
    また、いつレフェリーはグリーンカードを示すかというと
    ・プレーを止める必要はありません。
    ・ボールがプレーエリアから出たら、あるいはその他の理由でプレーが止まったら、すぐにカードを示します。
    ・試合終了後、センターサークルで挨拶をする際、チームやチームベンチに向かってカードを示します、などとなります。

    このグリーンカードがU-12(4 種)年代以下の各種大会、試合だけではなく、いろいろな種別の試合で積極的に取り入れられ、サッカーの価値を高め、相手・仲間と一緒にサッカー楽しむことを願っています。

  • 20250713「敵ではなく相手・仲間」

    サッカーの記事を読んだり、見たりすると、あるいはテレビ放送で聞いたりすると「敵に勝って」「敵陣深く攻め入り」「敵のクリアーを拾って」など「敵「という表現が気になっています。
    2008年度より日本サッカー協会、Jリーグでは、サッカー、スポーツの社会的役割を強く自覚し、サッカー界におけるリスペクトの重要性を認識し、リスペクトプロジェクトを開始しました。リスペクトは「相手に敬意を払うこと」、「大切に思うこと」、を意味し、相手チームの選手は「敵」ではなく、サッカーを楽しむ大切な「仲間」です。ですから、仲間に怪我をさせるようなプレー、侮辱・挑発するような言動は絶対にしてはならないことです。

    また、得点の喜びの場面で、控え選手が相手ベンチの前まで行ったり、バックスタンドの自チームの応援席まで走って行くのは相手に敬意を払った行動だとは思えません。
    サッカーを含めたスポーツには「相手・仲間」の存在は大きく、そのスポーツを楽しむには、相手チーム・選手・観客、審判員、指導者、用具、施設、保護者、大会関係者、競技規則、サッカーというゲームの精神などの相手・仲間の存在が不可欠であり、自分の技術や戦術などを高めるには相手・仲間がいることが重要だと思います。決して、「敵」ではないはずであり、「敵国」「敵陣」「敵の選手」ではありません。
    引き続き、サッカーの価値を高め、相手・仲間と一緒にサッカーを楽しみたいです。